12月1日前後で異なる人的控除
- 安田 亮
- 4月2日
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
令和7年度税制改正では、所得税に関する「人的控除」について大きな見直しが行なわれました。中でも注目されているのが、「基礎控除の特例」や「特定親族特別控除」の創設、および各種控除額の引上げです。
この改正は、令和7年(2025年)分の所得税から適用されますが、源泉徴収実務や年末調整における適用時期によって処理が異なる点に注意が必要です。とくに「12月1日」を境に取扱いが分かれることから、実務担当者にとって重要な確認ポイントとなります。
◼主な改正内容
▸ 基礎控除の引上げと特例の創設
合計所得金額2,350万円以下の納税者について、基礎控除額が10万円引き上げられ58万円になります
さらに、新たに導入される「基礎控除の特例」により、所得金額に応じて最大37万円の加算が可能です(最大控除額は95万円)
この特例のうち、一部は令和7年・8年分限定の時限措置です
▸ 給与所得控除の最低保障額の引上げ
給与所得控除の最低保障額は、55万円から65万円へ引き上げ
収入190万円以下の給与等に対して適用されます。
▸ 配偶者控除・扶養控除・特定親族特別控除
同一生計配偶者および扶養親族の合計所得金額要件が、48万円から58万円に引き上げ
新設の「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満かつ123万円以下の所得を有する親族に適用され、63万円~3万円の範囲で控除額が段階的に設定されます
◼「12月1日」を境に異なる適用関係
今回の改正で特に注意が必要なのが、年末調整のタイミングによって適用制度が異なる点です。
12月1日以降に最終の給与支給がある場合:改正後の制度で年末調整を実施
11月30日以前に最終の給与支給がある場合:現行制度で年末調整を行い、改正制度を適用するには確定申告等が必要
たとえば、12月を待たずに出国や死亡などで年末調整が行なえない場合には、納税者本人または相続人によって更正の請求を行なうことで、改正後制度の適用が可能となります(請求期限:12月1日から5年以内)。
◼ 実務への影響と備え
給与担当者や会計事務所では、次の点に留意して対応準備を進めることが求められます。
年末調整時期の確認とスケジューリング
改正内容に基づくシステム・帳票のアップデート
対象従業員への説明と申告支援の体制構築
11月30日以前に退職・出国する従業員への対応方針の整備
◼ まとめ
令和7年度の人的控除制度の改正は、対象範囲や金額の引上げにより多くの納税者に恩恵がある一方、適用のタイミングや申告方法の選択によって税負担が変わるケースも出てきます。
12月1日を分岐点とする制度上の取り扱いを的確に把握し、正確な年末調整・確定申告が行なえるよう、事前の準備をおすすめいたします。

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