おはようございます!代表の安田です。
2025年3月17日、東京国税局は「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱い」に関する文書回答を公表しました。本記事では、この文書回答の概要を解説し、合同会社の税務実務における重要なポイントを整理します。
1.事前確定届出給与とは?
事前確定届出給与とは、役員に対する賞与等について事前に支給日や金額を確定し、税務署に届出を行なうことで損金算入が認められる制度です。これは法人税法施行令第69条第4項に規定されており、要件を満たすことで、役員報酬として経費処理が可能となります。
2.合同会社における適用のポイント
合同会社では、株式会社とは異なり、「職務の執行の開始の日」を厳密に定める必要がありません。株式会社の場合、役員の任期や選任の手続きが会社法で規定されていますが、合同会社では業務執行社員が社員総会の決定によって職務執行を開始する形になります。
このため、東京国税局は今回の文書回答において、合同会社における事前確定届出給与の届出期限を以下のように定めました。
届出期限の考え方
「職務の執行の開始の日」は、定時社員総会の開催日とみなす
届出期限は、定時社員総会の開催日から1か月以内とする
このような取扱いが示されたことで、合同会社の業務執行社員が支給を受ける事前確定届出給与の手続きが明確になりました。
3.事例:A社の対応
合同会社A社(同族会社・新設法人ではない)は、業務執行社員に対して、毎月の役員給与とは別に役員賞与を支給する予定でした。そのため、以下の手続を行ないました。
A社の対応手順
定時社員総会の開催
事業年度終了後3か月以内に開催
役員賞与の支給日・金額を決定
総社員の同意を得る
役員給与と役員賞与の決定を総社員の同意をもって行なう
税務署へ届出
事前確定届出給与の届出書を所轄税務署へ提出
届出期限は総会開催日から1か月以内
支給の実行
届出した支給日に役員賞与を支給
この手続きを踏むことで、役員賞与は事前確定届出給与に該当し、支給日の属する事業年度の損金算入が可能となります。
4.事前確定届出給与としての要件
本件において、東京国税局は次の2点を満たしていれば、合同会社の事前確定届出給与が認められるとしました。
(1)届出書の提出期限を守ること
届出書の提出期限は、定時社員総会の開催日から1か月以内とされました。これは、株主総会における決定と同様の考え方に基づいています。
(2)役員賞与が事前確定届出給与として適正に決定されること
定時社員総会で支給日・金額を明確に決定する
その決定を総社員の同意によって行なう
これらの要件が満たされれば、事前確定届出給与として認められ、法人の損金算入が可能になります。
5.今回の文書回答の意義
今回の東京国税局の文書回答は、合同会社における事前確定届出給与の適用に関する実務上の不明確な点を明らかにするものであり、以下の点において意義深いといえます。
(1)合同会社の税務実務における明確化
これまで、合同会社では「職務の執行の開始日」が不明確であり、届出期限の考え方が統一されていませんでした。本回答により、定時社員総会の開催日を基準とするルールが確立されました。
(2)事前確定届出給与の適用範囲が広がる
合同会社においても、株式会社と同様に事前確定届出給与を活用できることが確認されました。これにより、適正な節税対策が可能となります。
(3)企業の税務戦略における参考指針
事前確定届出給与は、企業の利益調整や役員報酬の計画的支給に重要な役割を果たします。今回の指針を活用することで、合同会社の税務対策に活かせるでしょう。
6.まとめ
合同会社の役員賞与における事前確定届出給与の取扱いについて、東京国税局の文書回答により次のポイントが明確になりました。
「職務の執行の開始日」は定時社員総会の開催日とする
届出期限は定時社員総会の開催日から1か月以内
総社員の同意を得て支給日・金額を決定することが重要
適正な手続きを踏めば損金算入が可能
合同会社を運営する企業や税理士事務所にとって、今回の文書回答は実務上の指針となる重要な内容です。事前確定届出給与を適切に活用し、税務リスクを抑えながら節税対策を行なうために、ぜひ参考にしてください。

Comments