おはようございます!代表の安田です。
2025年3月10日、東京証券取引所(東証)は、英文開示および公開項目に関するFAQを更新しました。本記事では、今回の改訂内容のポイントをわかりやすく整理し、企業実務における対応のヒントをご紹介します。
背景:英文開示義務化の流れ
東証では、企業のグローバルな情報開示体制の整備を目的として、プライム市場上場企業に対する英文開示の義務化を進めています。これに伴い、開示の正確性・即時性を確保する一方で、現実的な運用にも配慮した柔軟なガイドラインが求められてきました。
FAQ改訂のポイント
今回の改訂により、以下のような実務的な対応指針が明示されました。
日英同時開示の原則と例外
原則として日本語と英語の同時開示が求められます。
ただし、開示直前まで内容調整が必要な場合には、日本語による開示を優先し、当日中に英文開示を行なうことが可能です(夜間で間に合わない場合は翌営業日午前9時までに開示)。
一部・概要開示の範囲
英文開示は「日本語開示の一部または概要」で足りるとされるが、その「水準感」には一律の定めはありません。
英文開示においては、「いつ何が起きたか」等の重要事項が把握できる程度の情報が必要です。
複数項目の同時開示時の注意点
日本語資料に複数の開示項目が含まれている場合、英語資料にも全項目を記載しなければなりません。
例えば、「決算短信」に減損損失が含まれる場合、英文資料にもその情報を含めるか、別途英文資料を作成する必要があります。
公開項目の明確化:TDnet FAQも公表
併せて東証は、2月28日にTDnet登録時の公開項目に関するFAQも公表しています。具体的には以下のような事例が紹介されています。
【その他の決定事実にかかる開示事項】
資金借入、社債発行、有価証券の売却、厚生年金基金の返上、大規模受注など。
【その他の発生事実にかかる開示事項】
為替差益、貸倒引当金戻入益、保険金や補助金の受領、課徴金納付命令など。
実務への影響と対応のヒント
今回のFAQ改訂は、英文開示の柔軟性を確保しつつ、情報の正確性とタイムリーな提供を両立させるための指針を提供するものです。企業においては以下の対応が求められます。
開示予定の日本語資料の構成を事前に精査し、英語版に含める情報の範囲を確定する。
夜間開示や複数項目の開示が想定される場合には、英文翻訳体制の強化や開示スケジュールの見直しが必要。
開示項目の分類に迷った場合は、東証の最新FAQを参照し、適切な項目選択を行なう。
まとめ
英文開示は企業の透明性と信頼性を高める重要なツールです。今後も東証のガイドラインやFAQの動向を注視し、適時開示の実務にしっかりと対応していくことが求められます。

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