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決算短信の英文開示

安田 亮

おはようございます!代表の安田です。


東京証券取引所(東証)は2025年1月22日、「英文開示実施状況調査結果(2024年12月末時点)」を公表しました。本調査によると、東証全市場において、決算短信を英文で開示している企業の割合は54.1%に達し、前年よりも増加しました。特にプライム市場においては99.0%の企業が何らかの形で英文開示を行なっており、英文による情報発信の重要性がますます高まっています。

本記事では、東証全市場における英文開示の現状と課題、企業の対応方針について解説します。


英文開示の実施状況

東証による調査では、全市場の企業における英文開示率は60.5%と、前年からわずかに0.1ポイント増加しました。一方で、プライム市場上場企業に限定すると、99.0%とほぼすべての企業が英文開示を実施している状況です。

特に決算短信に関しては、全市場で54.1%の企業が開示を行なっており、プライム市場に限れば93.8%と高い割合になっています。その他の資料に関する英文開示率は以下の通りです。

資料

全市場の英文開示率

プライム市場の英文開示率

決算短信

54.1%

93.8%

招集通知(本⽂・参考書類)

47.3%

92.4%

IR説明会資料

40.5%

76.4%

適時開⽰資料(決算短信除く)

30.3%

59.2%

CG報告書

16.8%

36.4%

招集通知(事業報告・計算書類)

14.3%

29.4%

有価証券報告書

12.5%

27.1%

これらのデータから、プライム市場の企業ほど英文開示に積極的であることが分かります。


プライム市場の英文開示の義務化とその影響

2025年4月以降、プライム市場上場企業に対して、決算情報および適時開示情報の日本語・英語の同時開示が義務付けられます。対象となる情報は以下の通りです。

  • 決算情報(決算短信、四半期決算短信、補足説明資料)

  • 適時開示情報

ただし、英文開示の範囲については、日本語資料のすべてを開示する必要はなく、一部の抜粋や概要のみでも認められています。

今回の調査では、プライム市場上場企業の決算短信に関する英文開示の範囲について、以下の結果が示されました。

英文開示の範囲

割合

短信のすべてを英文開示

51.9%

抜粋・一部を開示

41.9%

英文開示なし

6.2%

これにより、プライム市場の企業では、半数以上が決算短信の全文を英語で開示していることが明らかになりました。


英文開示のタイミングと課題

2025年4月以降、英文開示のタイミングについても、日本語と同時に行なうことが原則となります。しかし、開示直前まで日本語資料の内容が確定しない場合や、緊急対応が求められる適時開示などでは、多少の遅れが認められることになります。

現在のプライム市場上場企業の英文開示タイミングは以下のようになっています。

資料

同時開示

同日開示

翌日以降

英文開示なし

決算短信

51.7%

9.2%

32.9%

6.2%

招集通知

54.6%

11.4%

26.4%

7.6%

IR説明会資料

34.3%

7.7%

34.4%

15.8%

適時開示資料

38.6%

6.8%

13.8%

40.8%

同時開示の割合は増加傾向にありますが、まだすべての企業が完全に対応できているわけではありません。特に決算短信では、英文開示が間に合わずに後日発表となるケースが約4割にのぼっています。


企業の対応方針と今後の展望

今後、プライム市場の企業にとっては、以下のような対応が求められます。

  1. 英文開示の体制強化英文翻訳のリソースを確保し、開示の遅れを防ぐ仕組みを構築する必要があります。特に、決算短信や適時開示資料は、日本語と同時に発表することが望ましいです。

  2. 英文開示の範囲の見直し現状では、日本語資料のすべてを英文開示している企業は限られています。投資家のニーズを考慮し、情報の透明性を高めることが求められます。

  3. ITツールの活用翻訳支援ツールやAIを活用し、開示スピードを向上させる取り組みが期待されます。これにより、人的負担を軽減しながら、正確な情報発信が可能となります。


まとめ

東証の調査によると、全市場の54.1%の企業が決算短信の英文開示を行なっており、特にプライム市場では99.0%の企業が何らかの形で英文開示を実施しています。2025年4月以降、プライム市場上場企業に対する英文開示の義務化が予定されており、企業はより一層の対応を迫られることになります。

今後は、翻訳体制の強化やITの活用を進め、投資家にとって分かりやすく透明性の高い情報開示を行うことが求められるでしょう。

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