おはようございます!代表の安田です。
賃上げ促進税制の適用に関して、大企業や中堅企業向けの税制適用において、「マルチステークホルダー方針(以下、マルステ方針)」の公表が義務化された点が注目されています。本記事では、その概要と影響について解説します。
1.マルステ方針とは?
マルステ方針とは、企業が賃上げを行なうにあたり、次のような内容を明確にし、自社のホームページ等で公表することが求められる方針です。
給与等の支給額の引上げ方針
下請事業者等の取引先との適切な関係構築の方針
その他、企業がマルチステークホルダー(従業員、取引先、株主など)とどのように関わるか
この方針の公表は、企業が単なる賃上げにとどまらず、ステークホルダー全体への影響を考慮した経営を行なうことを目的としています。
2.対象企業
この制度の適用を受ける企業は、次の要件を満たす必要があります。
(1)大企業向け
以下のいずれかに該当する法人
資本金または出資金が10億円以上かつ常時使用する従業員数が1,000人以上
常時使用する従業員数が2,000人超
(2)中堅企業向け
資本金または出資金が10億円以上かつ常時使用する従業員数が1,000人以上
対象企業は、マルステ方針を公表したことを経済産業大臣へ届出する義務もあります。
3.公表期限と届出期限
従来は、公表期限と届出期限の両方が「適用事業年度終了日の翌日から45日以内」とされていました。しかし、令和6年度改正により、公表期限が前倒しされました。
項目 | 旧ルール | 新ルール(令和6年度改正) |
マルステ方針の公表期限 | 事業年度終了後45日以内 | 事業年度終了日まで |
経産大臣への届出期限 | 事業年度終了後45日以内 | 変更なし(45日以内) |
この改正により、企業は「事業年度が終わるまでにマルステ方針を公表」する必要が生じます。一方で、経産大臣への届出は事後的に行うことが可能です。
特に4月~5月は届出が集中するため、年度内に手続きを完了させるのが望ましいとされています。
4.グループ通算制度適用法人の対応
グループ通算制度を適用している企業の場合、通算法人の判定にあたっては個社ごとの基準を確認する必要があります。公表や届出は「通算親法人だけでは不十分」であり、対象となる通算法人ごとに対応が求められるため注意が必要です。
5.今後の対応策
企業がこの税制の適用を受けるためには、以下の対応を進める必要があります。
自社の賃上げ方針と取引先関係の整理
社内での賃上げ計画や、取引先との関係強化策を明確にする。
マルステ方針の公表準備
適用事業年度終了日までに、自社のホームページや報告書等に方針を掲載する。
経産大臣への届出手続き
事業年度終了後45日以内に、必要な書類を準備し提出する。
6.まとめ
令和6年度税制改正により、賃上げ促進税制の適用には「マルチステークホルダー方針」の公表が必須となりました。特に、大企業や中堅企業は、適用年度の終了日までに方針を公表し、45日以内に経済産業大臣へ届出を行なう必要があります。
企業は、税制適用の要件を満たすために、賃上げ方針の策定とその公表を早めに進めることが重要です。グループ通算制度適用法人も、個社ごとの対応が求められるため、適切な準備を行ないましょう。

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